SPaiS::Day in 「ビフォア秋口」

子供が大きな産声をあげた。俺はうれしくてうれしくて思わず飛び跳ねたりしたのだが、次の瞬間空間を転移したのかのようにその子供が俺の腕の中に納まっており、じぃっと俺を見つめなおすではないか。
生まれたばかりの子供と真っ向から視線がかぶさるのはなんだかおかしな気分で、気がついたら「こいつを笑わせないと」みたいな大人の負けず嫌い的発想が胸の奥からモリモリ沸いてきた。
渾身の思いを込めて「あばばばば」なんつってやったりすると、生まれたばかりの子供はキャッキャ、キャッキャと笑うではないか。よしやった。
しばらく経つのに笑いの止まない子供の眉間の辺りに、笑いじわがうっすらと。
次第にそれは大きくなり、皮膚のテンションが限界まで達したその瞬間「ピキッ」と眉間に切れ目が入り、その切れ目が左目に向かって徐々に進んでいるではないか。

「うわやべえどうしよ」くらいの冷静な精神状態の俺と、まだ笑い続ける子供。
明らかにどっちもおかしいのだけど、そこはそれ。

とうとう切れ目が左目に達した瞬間、パツン！という音と共に左目は巨大化し、瞳孔は薄暗くにごる。
俺を見る子供が「あーあ」という心境でいることがわかり、更にやっぱり左目だけでかいとえらい怖いので、でもそんな感情を子供に持つのはよくないと思い、そんな思いを振り切るように走って医者を探す。
そう、まだ病院内。子供が生まれて30分位の出来事。

左目だけ異様に大きくなった子供は全く感情を見せなくなり「ああマジでやばい」と思ってそこら中を駆けずり回るんだけども医者は見つからず。さらに焦って走っていると、俺の腕の中にまた変化が。

ぱっと子供を見ると顔面が後頭部の方向に落ちてどんぶりみたいになってる。
しかも肉厚が薄くなることで頭部が異常に大きく見え、それに伴い体の印象は薄くなるばかり。
走りながらチラチラ腕の中を見るたびにどんどん顔面が落ちていってる。左目はぎょろりと俺をにごった世界に映しこむ。なんにせよやばい状況だと確信した俺は、マックス大声で辺りに助けを求めようとしたその時、腕に昆虫が這うような不快な感触があり思わず立ち止まって腕を確認しようと、自分の腕とどんどん変形の進む子供の後頭部を順繰りに見てみると、子供の後頭部に海老の足のようなものがびっしりと生えているではないか。

余りの恐怖に子供を投げると、それは窓の外に飛び出してしまい、俺はダッシュで窓まで走って下を見るのだが、そこには一番最初に見た姿に戻って死んでいる子供が、大きさこそ元には戻ったけど、先ほどと変わらないにごった目で俺を見つめているのでした。
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そんな悪夢を見たのだけど、汗をかいて飛び起きるわけでもなく、至って普通に目覚めたけれど、さすがに精神的ショックがでかすぎて早朝鬱に。

誰か、夢判断してください。でもえらい結果だったら知りたくない。